約2万人のデータから見えた日本企業のキャリア課題と向き合うべき支援策
近年、働きやすさが着実に向上している一方で、日本企業では社員のキャリア自律が十分に進んでいないとの調査結果が発表されました。一般社団法人プロティアン・キャリア協会と4designs株式会社が実施した調査には、19,154件の回答が集まり、キャリアに対する多くの興味深い知見が得られました。本記事ではその主な調査結果と、今後企業が向き合うべき課題について掘り下げていきます。
調査結果の概要
調査において明らかになった特徴は大きく3つです。
1.
職場関係性に対する高い満足度
2.
キャリア目標の描きにくさ
3.
年齢とともに伸び悩むキャリア目標
これらの結果は、現在の日本企業が抱えるキャリア開発の課題を示しています。特に特筆すべきは、職場の環境が働きやすくなったとしても、キャリア目標に関しては低い水準が続いている点です。
1. 職場関係性への満足度が高いがチャレンジが少ない
調査から、77.4ポイントという高いスコアが職場関係性への満足度に示されましたが、主体的実践のスコアは60.39ポイントにとどまり、17.01ポイントのギャップがあることが指摘されました。今の環境では、従業員は安心して働くことができる一方で、主体的な挑戦や成長には結びついていないという矛盾した状態が浮かび上がっています。
この傾向は欧米の「静かな退職」とは異なるもので、日本型のキャリア停滞とも言える現象が見受けられます。つまり、職場における愛着や働きがいは損なわれていないものの、個々の挑戦意欲が deformed に減少しています。これは、今後のキャリア自律に向けた新たな取り組みを必要とする指摘でもあります。
2. 現在の仕事には満足も将来のイメージは薄い
エンゲージメントのスコアは76.4ポイントと高く保たれていますが、キャリア目標は60.7ポイントにとどまり、15.7ポイントのギャップが生じています。このことは、現在の役割には満足しているが、未来のキャリアを描くことが難しいという実態を示しています。
特に34.3%の回答者は、組織環境には満足しているものの主体的な行動にはつながっていないことがわかりました。日本企業で一般的に使われている「WILL・CAN・MUST」のフレームワークの中には、未来のキャリア設計よりも現在の役割に焦点を当てやすい傾向があります。このことが、将来のキャリア像を描く上での障壁にもなっています。
3. 年齢が影響する自己理解とキャリア目標の低迷
興味深いことに、調査結果は年齢と自己理解には相関が見られる一方、キャリア目標は全世代で低迷していることを明らかにしています。年齢を重ねることで自己の理解は深まるものの、自分の未来を描く力は弱いままという結果が示されました。
特に若年層は「組織環境への満足度」が高いものの、年齢が上がるにつれて満足度が低下する傾向も見逃せません。このような背景を考慮すると、個々のキャリア形成支援は企業が認識し、主体的に進めていく必要があります。
結論
調査結果から、日本企業が直面している課題は明らかになりつつあります。働きやすさの向上は達成されたものの、「未来を描く力」が育たない状態が続いています。この状況を打開するために、組織は従業員に対して未来に向けた具体的なキャリア目標の設定を支援する仕組みを整えていく必要があります。
さもなくば、企業はそのポテンシャルを十分に発揮できず、継続的な成長の機会を自ら手放すことになってしまうでしょう。社員一人ひとりが安心して未来を語り、新しい挑戦に踏み出せる環境作りは、今後の企業経営における重要な課題です。