出光興産、全固体電池に向けた硫化リチウム製造装置を千葉に建設
出光興産株式会社は、全固体リチウムイオン二次電池(全固体電池)の材料となる固体電解質の量産を進めるため、千葉県市原市の事業所内に硫化リチウムの大型製造装置を整備することを決定しました。これにより、同社は硫化リチウムの製造能力を世界トップクラスに引き上げ、蓄電池産業における一貫したバリューチェーンの構築を目指します。
構築予定のLi2S大型装置について
新たに建設されるこの装置は、毎年3 GWhに相当する量の硫化リチウムを製造できる能力を有しています。経済産業省から認定を受けたこのプロジェクトは、総事業費の213億円のうち71億円が助成金として支給される予定です。この助成金により、出光興産は高性能な固体電解質の量産を加速し、国内外のお客様に提供する体制を整えます。
全固体電池の特長とその可能性
全固体電池は、従来の液体電池と異なり、固体を電解質として使用します。これにより、イオンの移動が速く、充電時間を短縮するだけでなく、出力の向上も期待されます。また、高電圧や高温に強いため、エネルギー密度の向上や長寿命化が実現可能です。出光興産は、こうした全固体電池の特性を活かし、2027年から2028年にかけての実用化を目指しています。
新たなバリューチェーンの確立と質の向上
出光興産は、硫化リチウムを中間原料とする固体電解質の開発において既に数回の実績があります。1994年には、硫化リチウムの量産技術を確立し、以来、独自の製造技術によって高純度の硫化リチウムを製造してきました。その経験を生かし、急速に発展する電池市場のニーズに対応しています。
現在、出光興産は2つの小型実証設備を既に稼働させており、2024年10月には大型パイロット装置の基本設計を開始予定です。今回のLi2S大型装置の建設決定は、固体電解質の量産化に向けた重要なステップとなり、さらには全固体電池の社会実装への貢献につながるでしょう。
環境に優しい新技術
硫化リチウムは、出光興産が長年にわたり取り組んできた石油製品の製造過程から得られる重要な副産物です。この新たな装置によって、環境にも配慮した形で、資源を有効活用しつつ持続可能なエネルギー供給体制を整えることが期待されています。
出光興産は、これらの取り組みを通じて、日本の蓄電池産業の競争力向上に寄与し、次世代の電池材料市場でのリーダーシップを確立していく所存です。今後の技術革新により、全固体電池が切り開く新しいエネルギーの時代に期待が寄せられます。